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練習試合 ラストゲーム〜バベルを愛し、愛された男の物語〜対戦日時:2019年6月22日
1234TOTAL
shidows00011
大阪バベル44008
ついにこの日が来てしまった。
バベル一筋23年、ブルーバンビーノ(バベルサポーターの意)を誰よりも愛し、そして愛された男・蔵本のラストゲーム。

彼は結成時からの初期メンバーで、穏やかな性格と内に秘めた闘志でチームを支えてきた。
打球の速さは猛者揃いのバベルにおいてもトップクラスで、一時は4番にも君臨していた。

相次ぐ入団ラッシュから打順選考に悩む主将の森に、「僕はどの打順でもいい」と伝えてくれるなど、心の優しい一面も持っていた。
長期休みには実の姉とヨーロッパ旅行に行くなど、チームだけでなく、家族も愛する男だった。
そんな男が、このチームから去る。理由は転勤だ。全国転勤の会社に勤めるがゆえ、いつかはこの時が来ると覚悟してきた。でも実際に伝えられた時は信じたくなかった。ずっと一緒に野球をしたかった。でも彼は彼の人生を進む。それはどうにもこちらが引き留めることも、抗えることでもない。唯一自分たちに出来ることといえば、最後に彼が「このチームにいてよかった」と、心から思ってくれるベストゲームをするだけだ。

とはいえ、ささやかながら何か思い出に残るプレゼントがしたくて、この日、ナインは試合の2時間前に弁天町駅に集合した。
サプライズをしよう。コルクボードに、これまでの思い出の写真と、思い思いのメッセージを書いて貼り付けた。何も知らずにグランドにやってきた蔵本。喜んでくれるといいなぁ。健気に素振りを始めた蔵本を見つめるナインの表情は、どこかいつもよりも優しかった。主役の蔵本を4番に据え、プレイボール。

今日の相手は、マナーとチームワークの良さに定評のあるshidows様。蔵本のラストゲームに相応しい気持ちの良いチームだ。
初回、いきなりバベルが守備で魅せる。誰よりも蔵本を信じてきた坂口健太郎2世との呼び声高いキャッチャーの森が、ファールフライをダイビングキャッチ。チームに勢いをつける。
打線も、この日は勢いがあった。
先頭の韋駄天小山が内野安打で出塁して盗塁を決めると、今最も乗りに乗る竹原がこの日もライト線への強烈ライナーでタイムリーツーベース。愛妻が見守る中で、続く高田もサード強襲のタイムリーヒットを放ち、主役の蔵本もサードを襲うヒットで出塁。ここで満塁のチャンスに、エロテロリスト・中島。「高田の嫁がモチベーションになった」と、高めの直球を振り抜きレフト前にタイムリーツーベース!いきなり4点を奪う。

打線はまだ止まらない。レジェンドの森。「高田の嫁がいて良かった」と、振り抜いた打球はぐんぐん伸び、両翼130メートルでビッグバードの愛称で知られる波除グラウンドの場外へ叩き込むホームラン。「嫁っていいなぁ」とボヤく離婚戦士の森本も、ショートの頭上をライナーで越えるお手本のような3点タイムリーヒットで8-0と序盤から圧倒的な打力を見せつける。他にも、韓国フェイスの神代のセンター前ヒット、誰か止めてくれ男の竹原のツーベース、アツヲのゆるゆる三振、福林の爽やか3組ばりの爽やか三振が炸裂した。

そして試合も後半に差し掛かった時、予想もしなかった粋な演出が。「ピッチャー、神代に代わり、蔵本。ピッチャー、蔵本」。波除に響き渡るアナウンスは、割れんばかりの歓声にほぼかき消されていた。揺れるスタンド、目頭にハンケチを抑えるバンビーノ達、マウンドにゆっくりと上がる蔵本。完璧だ。全てが1つになった瞬間だった。溢れ出る感情からか、表情が見られないように帽子のつばを深く被った蔵本。このメンバーで出来る最後の試合を噛みしめるように、一球一球投げ込んでいく。お世辞にも速いとはいえないし、決め球といえるような変化球だってない。それでも、魂を感じる投球だった。フォアボールも出しながら、不器用ながらしっかり抑えた。チームは無事、ラストゲームを8-1で勝利することが出来た。

試合後、事前に作ってきた写真とメッセージつきのコルクボードをプレゼントした。蔵本は、嬉しそうに、そして驚いた様子で受け取ってくれた。土曜の昼下がり、公園の片隅で起きた温かい拍手。平和だ。蔵本が最後のスピーチを行った。

「こんな色んないい人達に巡り会えて、楽しく野球が出来ました」。口下手だが、一つ一つ言葉を選んで話してくれた。「最後になりますが....」と前置きした上で、こう締めくくった。

「7月末までは大阪にいるので、まだ野球出来ます」。

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おそらく、全員が心の中で総ツッコミをしたと思う。蔵本の真髄を垣間見た。
近畿の梅雨入りまで、もう少し。いつの間にか、野球シーズンの足音がすぐそこまで聞こえる時期になっている。湿気を含んだ夏前の生ぬるい空気が、ナインの緩んだ頬をかすめていった。